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2007年07月14日

五大学共同教養講座・成蹊大学-第2回

五大学共同教養講座・成蹊大学-第2回・「生活に密着した理工学と科学技術」
[2] 「油脂と健康ー栄養と美味しさから機能性へー」  成蹊大学 講師 原 節子(理工学部教授)


五大学共同教養講座・成蹊大学-第2回
小さな女の子と教育ソフト mdekiru を操作して遊ぶ。

 午前中小さな女の子と教育ソフト mdekiru を操作して遊んだ。昼食後家を出て雨の中を吉祥寺駅に向かった。
 向台五丁目行きのバスに乗って「成蹊学園前」に降り雨に濡れたケヤキ並木の下を抜け正門に入った。

五大学共同教養講座・成蹊大学-第2回
雨に濡れているケヤキ並木。五日市街道から右に曲がったところ。

 真っ直ぐ本館前に出ると左に回って8号館101室に行く。受付で資料と出席票を貰い室内に入る。まだ座ったままの学生がいたが、前回と同じ後ろから3列目で中央右の席を取った。開講にはだいぶ時間があるので、持参していた「インド人の論理学 問答法から帰納法へ」桂 紹隆・中央公論社を読む。

五大学共同教養講座・成蹊大学-第2回
101室ではまだ時間があるので持参した本を読む。

 しばらくして目を上げると講師席のあたりに講師らしい方がいて、前方の2つのスクリーンに今日の講義のタイトルが映し出されていた。

五大学共同教養講座・成蹊大学-第2回
101室の窓から雨のアトリオを見る。

 定刻になると原節子講師が紹介されて挨拶された後、講義はプリント「油脂と健康ー栄養と美味しさから機能性へー」の最初から始まった。
「油脂と健康ー栄養と美味しさから機能性へー」
 $ 植物:独立栄養生物
   動物:従属栄養生物
 $ 食品の種類
     西洋: 2,000 種類
     日本:12,000 種類
 * 油脂の種類
  ・代表的な油 (常温で液体)
    植物油:大豆油・なたね油(キャノーラ油)
        サフラワー油・ヒマワリ油・コーン油
        米油・ごま油・オリーブ油
    動物油:魚油(イワシ油等)・鯨油
  ・代表的な脂肪(常温で個体)
    植物脂:バーム油・ヤシ油・カカオ脂
    動物脂:牛脂・豚脂・乳脂
 * 油脂の化学構造

   CH2OH          CH2OCOR
    |              |
   CH- OH + 3RCOOH → CH- OCOR
    |              |
   CH2OH          CH2OCOR

   グリセリン  脂肪酸   トリアシルグリセロール
   アルコール   R:      (油脂)

   R: C15H31-, C17H35-, C17H33-
     C17H31-, C17H29-, C19H29-
     C21H31-

 * 日本人の食事摂取基準(2005)の主な脂肪等の摂取目標
 $ 栄養学では脂肪等に油も含まれる。
  ・総脂肪摂取量
    18-29歳 : 摂取エネルギーの 20〜30%
    30-69歳 :          20〜25%
    70歳以上:          20〜25%
  ・飽和脂肪量
          摂取エネルギーの 4.5〜7.0%
  ・コレステロール量
       男性: 一日あたり750mg未満
       女性: 一日あたり600mg未満
 * 脂質の食品別摂取量(g)(1999年国民栄養調査)
  ・見えない油 :43.8 g
    植物性:穀物・豆類・野菜等        :15.7 g
    動物性:肉類・卵類・乳類・魚類      :28.1 g
  ・見える油  :14.4 g
    植物性:植物油脂・マヨネーズ類・マーガリン:13.4 g
    動物性:バター・植物油脂         :01.0 g
   ・植物性合計:29.1 g
   ・動物性合計:29.1 g
  ・総合計   :43.8 g + 14.4 g = 58.2 g 約 60 g
 $ 一人一日あたりの油摂取量
      1人/1日あたり: 2, 000 キロカロリー
             油: 60 g
 * おいしさの要素
    甘味・酸味・塩味・苦味・うま味
    辛味・渋味
    香り・テクスチャー(歯触り・食感)・温度・色・形
    外部環境(雰囲気・温度湿度など)
    食体験(食習慣・食中毒など)
    生体内環境(空腹・塩欠乏・糖欠乏など)
     甘味 :糖質のシグナル
     うま味:蛋白質のシグナル
     塩味 :ミネラルのシグナル
     酸味 :腐敗のシグナル
     苦味 :毒物のシグナル
 * 味覚とおいしさ
  ・第一次味覚野(大脳皮質)  :何なのか?
  ・第二次味覚野(眼窩前頭皮質):おいしい!
 * 油脂・脂肪のおいしさ
    油脂・脂肪に味はないが、油脂・脂肪を含む食品はとてもおいしい。
   ・油脂・脂肪は味覚細胞で受容され、好ましい情報として脳を興奮さ
    せる。
   ・脳の興奮は共存する食品のおいしさを飛躍的に増強する。
   ・内蔵からのエネルギー情報が油脂の報酬効果を高め、さらにおいし
    さに執着させる。
 $ 人間は飢餓の中に生きてきたので油脂による報酬効果が生じる。
 *食品における脂質の役割
  1.栄養性
   ・エネルギー源
     油脂      :9kcal/g
     タンパク質・糖質:4kcal/g
   ・ビタミンE・植物ステロールの供給源
   ・油溶性成分の吸収促進
  2.嗜好性
   ・おいしさの付与
   ・満腹感
  3.機能性
   ・必須脂肪酸(リノール酸・リノレン酸)の供給源
   ・種々の生体機能の調節
 *油脂の摂り方
  ・脂肪摂取の量:
    摂取エネルギーの20〜25%(成人)
      見えない油(特に動物性油脂)に注意!
  ・摂取脂肪の質:
    飽和脂肪酸 / 一価不飽和脂肪酸 / 多価不飽和脂肪酸
         = 3 / 4 / 3
    n-6 系多価不飽和脂肪酸 / n-3 系多価不飽和脂肪酸
         = 4 / 1
 * 主要な脂肪酸の構造
  ・パルミチン酸 (C16:0)mp 63.1'c
  ・ステアリン酸 (C18:0)mp 69.6'c
  ・オレイ酸   (C18:1)mp 13.3'c
  ・リノール酸  (C18:2)mp-05.0'c
  ・α-リノレン酸 (C18:3)mp-10.0'c
 $ (C18:1)の説明
    カルボン酸から炭素(C)鎖が18個でていて、二重結合・不飽和結合
    が1個あることを示している。
 $ n-6 系、n-3 系の説明
    二重結合・不飽和結合の位置が炭素左の後ろ側から数えて6個目に
    あるのが n-6 系、3個目にあるのが n-3 系と表示している。
    オレイン酸  :n-9 系
    リノール酸  :n-6 系
    α-リノレン酸 :n-3 系
 * 各種脂肪酸の性質
  ・飽和脂肪酸:
     一般に血清コレステロール濃度を上昇させる。
     ミリスチン酸は上昇作用が大きい。
  ・一価不飽和脂肪酸:
     弱い血清コレステロール低下作用を示す。
     酸化されにくい。
  ・n-6 系多価不飽和脂肪酸: $リノール酸・血液を固める
     血清コレステロール低下作用を示す。
     過剰摂取するとアレルギー症状を示す。 $アトピー、皮膚炎
     酸化されにくい。
  ・n-3 系多価不飽和脂肪酸: $魚油・血液さらさら・出血性になる
     動脈硬化の予防作用・アレルギー抑制作用を示す。
     過剰摂取すると出血症や免疫力低下が促進される。
 * ドコサヘキサエン酸(DHA)
     炭素鎖 22、二重結合6個の高度不飽和脂肪酸。いわし、かつお、
     まぐろなどの魚油中にグリセリドとして存在する。
       生理作用
        制がん作用(乳がん、大腸がん、肺がんなど)
        血中脂質低下作用(コレステロール、中性脂肪)
        学習機能向上作用(記憶改善、健脳作用)
        網膜反射能向上作用(視力低下抑制)
        血圧降下作用
        抗血栓作用(血小板凝集抑制作用)
        抗アレルギー作用
        抗炎症作用
        抗糖尿病作用(血糖値低下)
 $ ドコサヘキサエン酸(DHA)の説明
     n-3 系脂肪酸であり、体内で生合成することができる。
 * 主な油脂の脂肪酸組成(%)
 $ あまに油はシソ油、エゴマ油として売られているが、中国では昔から
   食べられているという。
   なたね油は、最近カナダで品種改良されたキャノーラという商品名の
   油となって市場にでている。
 * 特定保健用食品とは
  ・生活習慣病の予防を目的とした食品で、予防効果が学問的に充分評価
   された機能性食品として認可されたもの。
  ・通常の食品と医薬品の中間的な性質。
  ・健康に対してどのような機能を持っているかを表示。
    ・おなかの調子を整える食品
        (フラクとオリゴ糖、ビフィズイス菌など)
    ・血圧が高めの方の食品
        (ラクトペプチド、杜仲茶配糖体など)
    ・コレステロールが高めの方の食品
        (植物ステロール、キトサンなど)
    ・ミネラルの吸収を助ける食品
        (クエン酸リンゴ酸カルシュウム、ヘム鉄など)
    ・食後の血中の中性脂肪を抑える食品
        (ジアシルグリセロール、DHA など)
    ・虫歯の原因になりにくい食品
        (パラチノース、キシリトールなど)
    ・歯の健康維持に役立つ食品
        (キシリトール還元パラチノースなど)
    ・体脂肪がつきにくい食品
        (ジアシルグリセロール、中鎖脂肪酸)
    ・骨の健康が気になる方の食品
        (ビタミンK、ダイズイソフラボン)
  ・国が個々の食品に健康強調表示を許可する世界初の制度
 $ エビデンスを調査して日本が世界で初めての制度を作った。
   食品には、エコナ、ヘルシーリセッタなどがある。
   特保認定の食品数は1993年の10品目から2007年には692品目になる。
 * 機能性油脂の酵素的調製
  ・植物油・魚油から +
   バイオテクノロジー(人にやさしく環境にやさしく)を使って +
   用途に合わせて調製するオーダーメイド機能性油脂
  ・機能性脂肪酸
     n-3 系不飽和脂肪酸:血栓防止作用、抗アレルギー作用など
     n-6 系不飽和脂肪酸:血清脂質低下作用
     n-9 系不飽和脂肪酸:コレステロール低下作用
     中鎖脂肪酸:体脂肪抑制作用
     共役脂肪酸:発がん抑制作用、体脂肪減少作用など
 $ ヘルシーリセッタ、オーダーメードで作る、成蹊大でも作る。
 * 健康な生活のために
  ・質・量ともにバランスのとれた食事
   ・脂肪の摂取量は25エネルギー%以下(1日あたり 60 g 以下)
   ・n-6 系 PUFA / n-3 系 PUFA = 4 : 1
     $この割合は日本では日常である。
   ・ビタミン E や C などの充分な摂取
  ・適度な運動
  ・規則正しい生活習慣
 $ 健康な生活の維持はすべてバランスの問題。
   ヒューマンストレスセンターの先生は病気のもとはストレスといっている。
   2007年7月14日の朝日新聞に出ていたトランス脂肪酸に付いての質問。
   マーガリンにはトランス脂肪酸があるが食品として問題があるのか?
   トランス脂肪酸はコレステロールを上げるが日本での摂取量は欧米に比べ
   て非常に少ないから問題にはならない。
   トランスとは二重結合の方向の違い。乳脂肪酸にも含まれている。
 講義が終って外にでると強い雨が降っていた。
つづく。

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